59が目覚めたのは縁起悪くもベッドの反対側
なぜか髪の毛は片側にペッタリ
ちょっと考えて寝相のせいだと気づく
適当な服を見つけて身に付ける
鏡をのぞいてちょっと悦に入る
荒削りながらカジュアルさも兼ね備える自分
窓の外に目を見やると目を奪われるのは向かいの「60」
60は美しい
爪の先まで完璧でピッタリの装いぶしつけさなど微塵もない
これ以上ないほどいつもピッタリの時間に現れそれも超クールにやってのける
59は伝えたかった
彼女の好きな花を知っていると
毎分毎秒毎時間彼女のことを思い続けるも思いが届かないことは分かっていた
決して結ばれない運命
通りのすぐ向かいにいる彼女とは住む世界が違うのだ
59は丸まったキレの良い60をこよなく愛すも60は59を"奇"数(odd)としか思えないから
59が好きな映画は「101」
60が好きなのは続編の「102」
ロマンティックな59は2人を薄幸な恋人だとは疑わず2人の力を合わせて"奇偶(遇)"で奇跡を起こせると信じた
一方60は母からの厳しい言いつけどおり2人の溝は埋められないそう固持した
その時59はママに支配された娘を愛そうとすることに無力を感じていたが少し計算をすれば癒されたはずだった
60から59を引けば残りは1で唯一無二の存在だから
ウジウジして2ヶ月が過ぎ61日後に59は「61」と出会った
彼は鍵をなくし両親も外出中だった
ある放課後のこと
彼がその家をふと見るとドアの番号は少しくずしたスタイルだと気が付いた
なぜこれまで話しかけなかったのだろう
彼女に招き入れられた59は口をあんぐり
61は60に似ていてちょっと大きいだけ
彼女の方が目が可愛らしく親しみある笑顔だった
そして彼と同様荒削りでカジュアル
そして彼と同様すべてが無秩序
そして彼と同様母親は友だちが来ても気にしない
彼女は彼に似ていて彼は彼女のことが好きだった
2人が似ていることを知れば彼女も好きになると彼は踏んだ
今回はいつもと違った
この子は素敵だった
彼は勇気をふり絞って"数字"を尋ねた
「私は61よ」という彼女に彼はにっこり
「僕は59」と答えた
「今日僕はすごく楽しかった明日良かったら僕の家に来ないかい?」
「もちろん」と彼女
奇抜な人と話すのが大好きな彼女は非公式のファースト・デートの誘いに乗った
彼の準備が整ったのは約束の1分前
でも彼女は1分遅く到着したので何の問題もなかった
その瞬間からノンストップでおしゃべりが続いた
2人は「xファクター」を好み
2つのファクター(因数)をもつ
これは欠点どころか2人の存在意義を高めていった
夜が明ける頃には互いが運命の人だと感じていた
ある日彼女はうぬぼれ屋の60について話していて少し不愉快そうにする59に気付いた
彼は顔を赤らめかつての恋心を打ち明けた
「ああなって良かったんだ僕たちが出会えたからね」
61は賢明だった
嫉妬にとらわれることもなく彼の目を見て優しく論した
「君は59で私は612人合わせると60の2倍になるの」
このとき59は目に涙をため
こんな唯一無二の娘に出会えたことを喜んだ
彼は"素数"たることの意味を話した
彼の心を分かつのは"1"と彼自身だけ
そして彼女こそ心を預けたい唯"一"の存在だと
彼女は同じ気持ちだと答えた
映画は半分本当だったとやっと分かった
あれは真の愛ではなくただの見本にすぎない
真の愛においては二人こそが"素"晴らしい例なのだ
ハリー・ベーカー
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